難聴になると、聴覚情報の処理が困難になり、脳がより多くのエネルギーを使って音を理解しようとします。音から得られる感覚が弱くなるため、脳は何らかの形で失われた感覚を過度に補おうとします。聴覚が衰えたぶん、触覚や視覚などをより鋭くしようと一生懸命働くのです。
この過程により、集中力や認知的な負荷が増え、疲れやすくなる可能性があります。
また、難聴になると、普段の会話や環境音などを聞き取るために集中力を高める必要があります。危険を察知するための音も聞こえにくくなることで、無意識のうちに不安になってしまうこともあるでしょう。また、働いている方は、仕事で会話を聞き逃してしまい、業務遂行や人間関係に影響を与えてしまうかも、とストレスが溜まることもあります。
このため、長時間にわたって聴力を補正しようとすることは、脳にとって負担となり、疲労を引き起こす可能性があります。人はエネルギーを失うと、仕事で成果を出したり、活動的でいることが難しくなります。
ですので、難聴者にとって「音を聞く」ということは、沢山の労力とエネルギーが必要なことで、それは極度の疲労感やストレスにさらされることと同じなのです。
さらに、難聴がある場合、周囲の音を聞き逃したり、他の人の発言を確認するためにより多くのエネルギーを使う必要があります。
これにより、日常のコミュニケーションや社会的な相互作用が困難になり、心理的なストレスが増える可能性があります。
その結果、疲労感が増し、日常の活動において疲れやすくなるかもしれません。
このような疲れを避けるには、まずは聞き取りやすい環境を作ることが大切です。
例えば、会議をするときには静かな個室に移動したり、車内では流れる音楽の音量を落としたり、パーティーのような騒がしい環境でおしゃべりするときは人混みを離れたり、ということです。
また、よく言われているのは、十分な睡眠の確保、運動や趣味で気分を切り替える、ストレスや疲れを感じた時に深呼吸でリラックスする等もいいでしょう。
以上のように「年だから仕方ない」と難聴を放置することは大きなリスクとなります。
加えて、難聴を放置すると、疲労感だけでなく、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- 認知機能の低下: 難聴が長引くと、脳の聴覚処理に関わる部分が萎縮し、認知機能の低下に繋がる可能性があります。
- うつ病: 聴力低下によるコミュニケーションの困難さや孤立感が、うつ病の発症リスクを高める可能性があります。
- 転倒リスクの増加: 周囲の音に気づきにくくなり、交通事故や転倒などの事故に遭うリスクが高まる可能性があります。
難聴がある場合は、できるだけ早く医師や専門家に相談し、適切な治療や補聴器の利用を検討することをおすすめします。
補聴器には、脳が音をきちんと理解できるようにサポートする様々な機能が搭載されています。例えば、騒がしい場所では会話と雑音を分けて処理して会話がしっかり聞こえるようにしたり、後ろから声が聞こえてきたらその方向の音にフォーカスしたり、周囲の状況に応じて耳に届ける音量を自動で変更したりなど、複雑かつ繊細な調整を自動で行ってくれるのです。
補聴器を装用したら完全に疲れないということではありませんが、補聴器のこれらの機能が難聴者の聞く努力を軽減し、聞くことで感じる疲れを低減することにもつながります。適切な対策を取ることで、難聴に伴う疲労感を軽減することができる場合もあります。
難聴でお困りでしたら、まずはご相談ください。